前立腺肥大症
前立腺は男性の膀胱の出口(膀胱頸部)の尿道側にあるクルミ大の臓器です。男性生殖器の一部で精液の生成に関係しています。40歳代後半より加齢とともに大きくなり(肥大化)、「おしっこが出にくい、近い、もれる」などの症状があらわれます。男性ホルモンの関与がその原因といわれています。時に、膀胱に溜まった尿を排出できなくなる「尿閉」をきたすことがあります。治療の第一選択は内服薬(αブロッカー、抗男性ホルモン剤など)です。改善が見られない場合には内視鏡による手術が行われます。
前立腺癌
生活の欧米化に伴い増え続けている癌です。肥大症同様に男性ホルモンの関与がその原因です。2011年の厚生労働省の5歳階層別男性癌患者数統計では65歳以上の各年齢層において胃癌を抜いて1位となっております。高齢になればなるほど増える典型的な高齢者癌です。近年前立腺特異抗原(PSA)による市町村の検診により早期癌として発見される機会が増え、早期発見・治療に寄与しています。最初は無症状のことが多く、前立腺肥大症よりも症状は軽く、発見が遅れることもあり、転移しやすい骨の痛み(腰痛など)で受診される場合も少なくありません。早期であれば、薬物(内分泌療法)、手術、放射線療法などで十分根治可能です。悪性度が低い場合は進行が極めて緩徐ですので無治療で経過観察することもあります。一般的に前立腺癌は発生から増大するまでの期間が長く、癌死は少ないとされています。たとえ進行癌であっても薬物療法が効果的です。
膀胱炎
女性に多い膀胱の感染症です。細菌性が多く、その原因菌の多くは大腸菌です。排尿時痛(特に終末時)、尿の濁り、残尿感、頻尿といった「膀胱刺激症状」があらわれますが、内服薬(抗生物質)で治ります。
過活動膀胱
この疾患は「急激な尿意を催し我慢ができない、もらしてしまう」といった症状で、40歳代までは女性が、50歳代より男性が多くなり、特に高齢男性では前立腺肥大症に伴う症状のひとつとして最近報告されるようになりました。治療は膀胱の収縮を抑える内服薬(抗コリン剤、β3受容体作動薬など)を用います。
血尿
顕微的血尿と肉眼的血尿があります。前者はいわゆる「尿潜血」として健康診断で指摘された後、受診される場合が多く、尿を遠心分離して、実際に顕微鏡で血尿(赤血球)の有無を確認します。健診で「尿潜血」といわれても、実際には血尿がない場合もあります。超音波検査(結石、腫瘤などを検査)、尿細胞診(膀胱癌などの尿路癌を検査)をチェックします。尿潜血に加えて蛋白尿があれば、腎炎の検査(血液、尿の精密検査)をします。一方、後者の肉眼的血尿は実際に「赤い尿がでた」場合であり、悪性疾患の検索を中心に精査し、時に膀胱鏡検査を付加して行うことになります。
尿路結石
生涯罹患率(生きている間に罹る確率)は10~15%ともいわれ、比較的若い年齢層に多く、泌尿器科ではよく遭遇する病気です。結石は腎臓で作られ、尿管、膀胱へと移動します。特に尿管に結石が滞ると突然のわき腹の痛みを感じ、いわゆる七転八倒の状態となります(疝痛発作)。汗を大量にかく夏季に多く、脱水により尿が濃縮され結石ができやすくなることがわかっています。大きさが1cm以下であればその多くの結石は自然に尿と一緒に排出されます(排石)。尿管を弛緩させる薬剤、水分の補給によりその効果は上がります。なかなか排石されない場合は体外から衝撃波を当てる砕石治療、直接内視鏡で結石を観ながら砕石する治療があります。健診で尿潜血を指摘された場合に尿路結石が見つかることがあります。